ワンダーエッグ・プライオリティの、言い換えれば主人公大戸アイの目指すわかりやすい目的は、彫像となった親友の長瀬小糸を生き返らせる(?)こと。
そもそもこの世界には謎と不思議が前提として存在します。
人間の入った卵・ワンダーエッグ。
エッグの中の人間と迷い込む異世界・エッグ世界。
エッグ世界でエッグの中の少女を狙う敵・ミテミヌフリとワンダーキラー。
エッグ世界に存在する死んだはずの人物の彫像。
そして、エッグを販売し少女たちをけしかける仕掛け人・アカと裏アカ。
この記事では、アイやリカたちメインキャラクターの目的となる「彫像」に焦点を当てて考察してみます。
3話時点で登場した彫像は2名。
アイの目的である小糸と、リカの目的であるちえみ。未登場だがねいるの妹。
この共通点から察するに、まずメインキャラクターとされる4人(アイ・ねいる・リカ・桃恵)には救いたい人(彫像)が存在します。
そして彫像となった人はすでに死んでいる人物である。
まずはここについて深堀していきます。
「死人の彫像」は生き返るか?
まず彫像が存在するのは現実世界ではなくエッグ世界である。
1話でワンダーキラーを倒し西城くるみを解放したことで、小糸の彫像に「体温が戻っている」感覚を得ます。
西城くるみ©WEP PROJECT
この事から「エッグの中の人間を守る(ワンダーキラーを倒す)ことで彫像が生きている人間に戻る」と示唆されています。というかアイはそう思っています。
これが物語の軸となる目的なのですが、この前提も少し信憑性に欠ける気もしています。
まずワンダー要素であるエッグ世界と彫像を知るアカたちは、「エッグの中の人間を助ければ(ワンダーキラーを倒せば)彫像が生き返る」などとは明言していません。
守りきったくるみが消えてしまったアイに「親友を取り戻したいなら」と言っただけです。
ま、普通に考えれば生き返りそうなもんですが、断言しないアカの性格上なにか裏がありそうな気もします。流石に考えすぎ?
彫像となった長瀬小糸は現実世界で間違いなく死亡しています。
屋上から落ちて頭から血を流している描写があるので、間違いないでしょう。
長瀬小糸(現実世界・アイの記憶)©WEP PROJECT
つまり現実世界での長瀬小糸の肉体は既に死亡している、とすれば、どうやって生き返るのでしょうか?
不思議な世界とつながるワンダーな世界観に、ロジックを説明しろというつもりは勿論ありませんが、どうも引っかかります。
彫像を解放したあかつきには、やはり親友を「取り戻せる」だけで現実世界で生き返る、とは違うような気がしています。
そしてその彫像があるエッグ世界ですが、小糸はアイの世界に、そしてちえみはリカの世界に存在します。ここまではOK。
ではこの「エッグ世界」とは誰のものか。
私は最初エッグの中にいた人物の精神世界だと予想していました。
アイの助けたくるみと南は、どちらも学校でのいじめ・部活でのパワハラに強いトラウマを抱えていました。
そこに囚われている描写として、そのトラウマを反映した舞台が構築されるとすれば、両者のエッグ世界が学校となるのは不自然ではありません。
しかし、浜辺のある花畑の草原で戦っていたリカが、アイと2度目のエッグ世界に入ったときも同じくこの草原でした。
この事から、舞台となるエッグ世界は、エッグの中身ではなく所有者の世界が構築されていることがわかります。
つまり「学校」に引っ張られているのは、くるみや南ではなくアイ自身。
アイが迷い込む夢は学校で、リカは海辺の花畑。これはエッグの中身ではなく所有者に固有のものだということがわかります。
つまり、各自が夢の世界で一人の彫像を所有している、ということになりますね。
エッグの中身と彫像の関係
エッグの中身ですが、これは大方の予想通り「自殺した人」であることは間違いなさそうです。
そしてアカ曰く、アイの助けたくるみも「どこかの世界で彫像になっている」そうです。
この言い方が少しややこしくて、
「(何らかの思いを抱えて)自殺した人は彫像になる」のか、
「自殺した人はエッグになり、エッグ世界で助けられれば彫像になる」のか、どちらともとれるんですよね。
個人的には前者の方だと考えますが、もしかしたら前提から逆かもしれません。
「自殺した人が彫像になる」、のではなく、
「自殺してしまった大切な人に対する無念が、その人の夢に彫像を作る」のではないでしょうか。
つまりあの彫像は自殺した誰かが勝手に彫像化したものではなく、エッグ所有者であるメインキャラたちが「生み出した」ものではないか、という説です。
もしくはその両方かも。
彫像は誰が創る?
しかしこの仮説を前提とした場合、自殺しエッグになったくるみも彫像になっていることを考えると、「くるみの死に何かを思う誰か」が居てはじめて、その人のエッグ世界にくるみの彫像が出来上がるはずです。
つまり彫像になるには、「友達以上」に思ってくれる人が必要なんじゃないかと思われます。
が、くるみは「表面上の友達だけで親友はいなかった」と言っていましたよね。
いきなり仮説崩壊。いや、ちょっと待ってください。
これはあくまで、主観でしかないんです。
というか、友達・友情・親友だのの不定義で曖昧な関係は、結局のところ証明できないものです。
多分ここもワンエグでの主張の一つだと思います。
何が言いたいかというと、「自分はそう思っていなくても、相手は友達だと思っていることってあるよね」、ということ。逆もまた然り。
例えばリカが救出を目指しているちえみ。
デブでアイドルのおっかけだったちえみは、リカのことを「友達以上」に考えていたでしょうか?
答えはイエス。しかしノーへと変わり、変わったからこそ自殺という選択をしたのでしょう。
自分のすべてを捧げていたアイドル、自分の生きがいそのものからの否定、による絶望。
ちえみはリカに対しての大きな気持ちはありましたが、リカから自分への気持ちはないんだと感じたのでしょう。
つまりちえみの視点からすれば、リカは友達どころか自分の応援を拒絶された存在です。
しかし、リカのエッグ世界には彫像になったちえみが居ます。
当然、リカはちえみに対する感謝や後悔、贖罪など「友達以上」の大切な存在として思っています。
客観的には気持ちは相互関係でしたが、気持ちの伝え方や環境・第三者などによって「主観によるすれ違い」が起きていたわけですよね。
だとしたら、くるみにだってそれが起きていた可能性もあります。
くるみは「友達はいない」と言っていましたが、くるみのことを大切に思っている人もいたのではないでしょうか。(だから彫像になった)
もしくは、エッグ世界で繋がったアイが友達に「なった」ということでしょうか。
まあ、ここまでのセクションは↑の仮説をこねくり回してるだけなんですけど、まだワンチャンありそう。
でも本当に面白いのは、彫像になった人の死に、彫像を生み出したエッグ所有者が関わっている(かもしれない)という点です。
わかりやすいのはリカですね。本心はどうあれ、リカの直接的な拒絶がちえみを死に追いやったはずなので。
……ということは、小糸にとってのアイも、そうなのかもしれません。
アイは小糸の死んだ原因に納得いっていない様子ですが、小糸側からしたら全く違った景色に見えるでしょう。
それこそすれ違いだったり、アイの無意識によるものだったり、アイの振る舞いが小糸を追い詰めた可能性だって十分ありえますよね。
というか私はそう思っています。
善いとか悪いとかではなく、思春期の友情ってそういうものだよね、ということ。
というわけで、ワンエグ考察、続きます。