物語の着地点
さて、とんでもない爆弾が投下された第11話。
その爆弾に触れる前に、まずはこの物語の着地点となる「スクールアイドルフェスティバル」の進捗について。
虹ヶ咲や学園だけでなく、他校や街を巻き込んだ規模のフェス、実現可能かどうかは置いといて、面白いですよね。
個性豊かなメンバーそれぞれが、好きな場所でライブできるのであれば、虹ヶ咲の「みんな違っていい」を乗り越えたいい答えだと思います。
上原歩夢:オリジン
といったストーリー上の大目玉であるスクールアイドルフェスティバルは置いといて、それどころじゃなくなってしまったのが今回の本題。もちろん上原歩夢について。
前回の10話から度々憂い気なカットが差し込まれていましたが、今回ついに感情が爆発しちゃいました。
今回の11話をきっかけに、改めて歩夢回である1話を見返したのですが、我々は上原歩夢のなんたるかをまるで理解していなかったのかもしれません。
振り返ってみると、これだけ個性や主張の強い面々の中、歩夢の「自主性・主体性のなさ」は度々表現されてきたように思います。
前回の「歩夢はどんなステージにしたい?」や、今回の「どこでライブしたい?」といった各面々が自分の個性を主張する場で、歩夢だけは迷っていたり答えを濁していたりしています。
これを踏まえ、物語終盤に再び3話跨りの歩夢回を持ってきているということは、彼女だけはまだその答えを持っていないのではないでしょうか。
1話から9話までの各ソロ回では、同好会の、そして担当キャラの「課題」とそれぞれ向き合ってきました。
歩夢は可愛いものが好きだという恥ずかしい本心をさらけ出し、侑の手引があって初めて最初の一歩を踏み出すことができました。
こうしてスクールアイドルとしての一歩を踏み出した歩夢は、それからも自己紹介撮影のあゆぴょんなど、スクールアイドルとして自身の個性と向き合いながら成長していったように見えました。
果たしてそれは違ったのでしょうか。
今回の歩夢を振り返ります。
歩夢の感情の起爆剤は、自分が知らなくてせつ菜が知っていた侑の一面。
そして侑の語りかけた夢と未来への否定。
つまり依存と独占欲です。
せつ菜への嫉妬を醜いなんていうつもりもないですし、思春期の女子高生同士の友情と恋愛がないまぜになっている感情を理解できる立場でもないですが。
ネットの評判ではかなり「リアル」だという声も多いですし、私もネガティブな印象は受けていません。
サブタイトルにあるように、歩夢が向き合うべき課題は自身の夢です。
歩夢は第1話で、自身の夢と、それと共に在ることを侑に告白しました。
侑もそれに答え、「私はいつだって歩夢の隣にいる」と返しました。
歩夢の本当の望みは、自分の夢の隣に高咲侑がいることであって、その夢自体は何でもいいのです。
もちろん、歩夢がスクールアイドルをやっているのは侑に勧められたからではなく、自身の決意によって志したもので、彼女の自主性を損なう観点ではありません。
また、スクールアイドルが手段に過ぎないことも問題ではないでしょう。それは歩夢に限った話ではないですし。
しかし「スクールアイドルを通じて自分の好きなものに正直になる」みたいな夢そのものよりも、それを一緒に見てくれる高咲侑の存在の方がウェイトが大きいだけなんですね。
だから同好会に入り、かすみやせつ菜を始め、自分ではない誰かの夢を応援するようになった侑に、気持ちが動かされ続けていたのでしょう。
だから、スクールアイドルとしての自分が「やりたいこと」に目が向かず、ブレてしまったのではないでしょうか。
歩夢にとって侑は幼馴染で、同好会の誰とも違う「特別」でありました。
それは侑も同じでしょう。
言わなくても「そう」だった関係を、スクールアイドルというトキメキとの接触によりステージを押し上げ、明確な言葉で「夢を一緒に見てくれること」を願った。
歩夢にとって夢の原点は、徹頭徹尾どうしようもなく高咲侑なのです。
これを「依存」や「独占欲」なんて言葉で片付けていいのか、私にはわかりません。
しかし歩夢が悪い点ももちろんあります。
それは自分のそばにいて欲しい、高咲侑の夢を無視していることですよね。
正確に言えば、「侑の夢=私の夢(を一緒に見ること)」だと思っていることです。
確かに侑が探していて、そして歩夢と共に見つけたトキメキは、「頑張っている誰かを応援すること」でした。
なので侑は歩夢の夢に答える一方、同好会みんなの夢を応援し続けてきました。
これが歩夢には耐えられなかったんですよね。
1話を見返して気づいたのですが、侑がスクールアイドルというトキメキに触れ、誰かを応援したいという夢を見つけた後、優木せつ菜を探しに行きます。
しかし同好会は解散し、優木せつ菜はスクールアイドルをやめてしまったという知らせを受けます。
このときの、一瞬の安堵の表情。
そしてその帰り道での歩夢の決意。
侑が応援したくなった優木せつ菜が、スクールアイドルをやめたことで、掴みかけた高咲侑の夢は空中で霧散してしまった。
自分以外に夢を見出してしまわなくて、本当によかった。
今なら、自分がスクールアイドルになれば、私の夢を応援してくれる。
邪推しすぎでしょうか。
しかしそれほどまでに、上原歩夢の想いは真に迫るものがありました。
とはいえ、侑の話を聞かずに押し倒してしまったことは、多少「自分勝手」と見られても仕方がない部分はありますよね。
侑が語ろうとしたのは未来について。しかも、歩夢にだけ。
なぜなら、もちろん侑にとっても歩夢は特別だから。
話の流れからして、作曲関連のことだと思うのですが…
・歩夢の曲作ってみたんだよね(歩夢の夢を応援するのが(も)私の夢だから)
・イベントで歌う皆の曲作ってみたんだよね(夢を追いかける人を応援するのが私の夢だから)
あたりだと思うんですよね。最終回ではまた新曲が流れるはず…ですから。
というメタ予想を抜きにすれば、
・これからはみんなの曲を私が作ろうと思う(作曲担当)
・これからは歩夢の曲は私が作ろうと思う(ハッピーエンドね)
「もっと先のこと」を捉えるなら
・作曲家になろうかな(今までのソロ曲が自作扱いならまあ…)
とかですかね…?
しかし歩夢は、自分の知らない、自分の映っていない未来なんて知りたくないし聞きたくないと。
すれ違い、わかります。
でもここまで言っちゃいました。
「侑ちゃんだけのスクールアイドルでいたい」
「私だけの侑ちゃんでいて」
それならもうわからん!
この女難しすぎる!!いや感情がストレートすぎる故にどうなるのかわからん!!
まとめ
突き詰めればこれは高咲侑への依存なのですが、せつ菜にもかすみにも悪気がないので、この激重感情のやり場をどうするべきなのか……
でも歩夢もああ見えて強かなので、「私だけを見て(束縛)」じゃなくて、自身の本当の夢でもって、「私だけを見て(魅了)」と侑に分からせるのが一番な気がします。
……でないとこのメンヘラ分子のせいで同好会ギスりまくりだと思うので…。
虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会感想記事
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