今回は、皆大好き異世界ファンタジーでありながら、一風変わった作風のコミックを紹介します。
原作:山田鐘人先生・作画:アベツカサ先生による『週間少年サンデー』にて連載中のマンガ、『葬送のフリーレン』です。
『葬送のフリーレン』はどんなマンガ?
異世界ファンタジーと言えば、「勇者が魔王を倒す」というのがテンプレートですよね。
もちろんこの作品も例に漏れず、そのテンプレートを踏襲しています。
しかし、面白いのは、『葬送のフリーレン』の物語は「勇者が魔王を倒した後」を描く物語なのです。
そう、この物語は1ページ目から、「魔王を倒した後」から始まりるのです。
魔王を倒し世界を平和にするため、旅に出た勇者一行。
勇者ヒンメル、戦士アイゼン、僧侶ハイター、そして魔法使いのフリーレン。
フリーレンは魔王を倒した勇者のパーティメンバーなのです。
しかし人間であるヒンメルやハイターと違い、フリーレンは「エルフ」です。
1000年生きると言われる長寿の種族、エルフ。
いわばこの作品は、「エルフと人間」の感性の違いを描いたマンガなのです。
魔王を倒し世界を平和にした勇者、ヒンメル。
数十年後、天寿を全うしたヒンメルを弔う大勢の人たち。
みんなが涙を湛えて、感謝と栄誉でヒンメルを見送る中、顔色一つ変えないフリーレン。
「…だって私、この人の事何も知らないし…」
「たった10年一緒に旅しただけだし…」「葬送のフリーレン」1巻
10年の旅を経て、ともに魔王を倒した勇者とその仲間。
「…人間の寿命は短いってわかっていたのに…
…なんでもっと知ろうと思わなかったんだろう…」「葬送のフリーレン」1巻
人間にとっては長い旅路の10年も、エルフにとっては人生の100分の1。
この時間感覚の違いを、フリーレンは「10年も」旅してきた勇者の死によって初めて痛感します。
しかしこれはあくまでも1巻1話のプロローグ。
エルフであるフリーレンが、短い人間の一生を看取り、何を想い何を為すのか。
それがこの物語の構成です。
長寿であるがゆえ、全ての関わる人より長生きし、全ての関わる人を看取らねばならない。
ゆえに、『葬送』のフリーレン。
特徴的な作風
エルフ=長寿というのはファンタジー文化が定着した日本では、アニメやマンガ、ゲームを嗜む人にとっては当然の知識かもしれません。
しかし、この設定をこれほど上手に、リアルに描いた作品は珍しいと思います。
そしてなんと言っても特徴的なのは、作品の作風というか、雰囲気のようなものです。
ファンタジーな冒険譚であれば、魔王を倒しに行くスリリングでワクワクする雰囲気になると思いますが、『葬送のフリーレン』はそうではありません。
魔王が倒された世界で、勇者の残した痕跡を辿るエルフの旅。
異世界の冒険でありながら、とてもゆったりとした雰囲気が誌面から溢れています。
長寿のエルフ、フリーレンならではのスローなテンポと、どこか寂寥感のにじむ物語。
しかし続きが気になる面白さを秘めた、そんな独特な雰囲気の作品です。
この作品は今年2020年の8月に、作者のアベツカサ先生がツイッター上で1巻の一部を公開したことでも話題になりました。
勇者の死後も生き続ける、エルフの魔法使い。1/18 pic.twitter.com/rWVQENyzTX
— アベツカサ (@abetsukasa) August 18, 2020
こちらで72ページ分、1巻収録の2話まで無料で読むことができます。
このツイートは4万3000件のリツイート、9万7000件のいいねをされており、多くのユーザーがその斬新な設定と特徴的な世界観に引き込まれた証拠です。
そんな『葬送のフリーレン』は、現在単行本第2巻まで発売中。
第2巻では特徴的な作風はそのまま、「異世界冒険」感が更に加速し、「葬送のフリーレン」の持つもう一つの意味に迫ります。
あなたもぜひ、この機会に読んでみてはいかがでしょうか。