コスプレに「法整備」? オタクが知るべき・考えるべき作品の「著作権」について

アニメや漫画などオタクコンテンツのファンによる、オフラインイベントの代名詞である「コスプレ」に、国として法的な整備のメスが入れられようとしているのはご存知でしょうか。

2021年1月に行われた、クールジャパン戦略担当相である井上信治氏の報道から、オタク界におけるコスプレ文化に起きていること、起きるかもしれないこと、そして我々が考えなくてはいけないことを整理してみましょう。

 

コンテンツを消費し楽しむ我々オタクが、必ずしなければならない行動は、とにかく「知る」ことです。

アニメや漫画、そしてコスプレなどクールジャパンコンテンツを愛する我々が、誰よりもそれを取り巻く権利関係について理解していなければなりません。

この記事がその機会の一助になれれば幸いです。

 

Youtube動画はこちら

 

 

日本文化「コスプレ」における著作権の法整備

事の発端にして今回の記事で取り上げるメイントピックスがこちらです。

1月23日にて井上氏の

「コスプレ行為は非営利目的なら著作権に抵触しないが、イベント報酬などが発生する場合は著作権侵害にあたる可能性がある。

 コスプレは文化として日本国外にも広まってきたため、ルール整備が必要である」

という意の声明を発表しました。

 

これを機にコスプレ業界を初め、オタクコンテンツのファンの間にも波紋を呼び、不安の声も高まっていました。

しかし1月29日に井上氏は改めて声明を発表。

曰く、

「政府の規制によって、コスプレを楽しむ方がこれまで通り活動できなくなることは本意ではない。

 ただし、海外も含め今後もコスプレ人口が増加していくこと共に、法的な問題へと発展していく可能性も懸念されている」

と述べています。

 

これまでのファン活動としてのコスプレに水を差したいわけではないが、将来的な可能性も含めて検討する必要がある、という見解です。

 

 

 

コスプレ文化拡大の背景

これらの事態の背景には、間違いなくポップカルチャーとしての「コスプレ」需要の増加、即ち日本が誇るべきアニメ・漫画産業の拡大に他ならないでしょう。

例えば2019年から2020年に大ヒットとなった『鬼滅の刃』をはじめ、日本の作品が日本を超えて世界中の人の注目を集めるコンテンツとなるケースは増えています。

そうなれば必然、「ファン活動」の一環であるコスプレ文化にも海外のファンが増加していくことになります。

これらの事態を踏まえ、予測し、日本のコンテンツに対する権利関係に疎い海外ファンのためにも、今回の「法整備」はなされる筈です。

 

もちろん、クールジャパンとしてのアニメ・漫画文化の海外人気は以前からも高く、コスプレ活動を行う海外ファンも数多く居ました。

しかし、異例のメガヒットを記録した『鬼滅の刃』がこの流れを後押しした気配はしますね。

 

 

 

コスプレと作品の著作権

では、「勝手に」「作品のキャラクターに扮する」行為は、作品の著作権侵害にあたるのか?

まずざっくりと結論から言うと、著作権侵害となる場合もある、です。

 

前提として、著作権侵害とは親告罪です。つまり、権利者側が告訴した場合のみ問題が生じます。

つまり結局の所、権利者(コンテンツ製作者)の匙加減次第だということです。

しかし、これは非常に重要なことなのでよく覚えておいて下さい。

作品の著作権と、それを利用するファン活動は、非常に曖昧で絶妙なバランスで成り立っているのです。

 

 

ではあなたがコンテンツクリエイターだとして、あなたが創った作品のキャラクターを、知らない誰かが勝手に使っていればどう思うでしょうか?

そういったことを防ぐために、クリエイターと著作物を守る著作権が存在します。

つまり、誰かが作った作品を勝手に使うことは原則として禁止です。

しかし現状、このオタク大国日本ではコスプレが文化として根付き、SNSにはアニメ・漫画キャラクターのアイコンが並び、同人誌即売会というイベントが定期的に行われています。

その通り、これらの「ファン活動」はファンが「勝手に」やっていることなので(告訴されない限り)著作権侵害とまではいきませんが、「原則禁止」を破ったグレー行為なのです。

 

ではなぜ、これらの行為が今まで摘発されることなく可能だったのか?

答えはとてもシンプルで、権利者側が「黙認していた」からにすぎません。

なぜなら権利者側、つまりクリエイターからしても、ファン活動が活発になり作品が広まることは望ましいことだからです。

つまり、健全なファン活動によるWin-Winの関係であれば、権利者側が「ファン活動」に口を出すことはないでしょう。

これが「ファン活動」であるコスプレや、同人誌などの二次創作が「黙認」されてきた理由です。

しかし判断するのはあくまで権利者側です。我々は権利者が黙認してくれる範囲で活動する義務と責任があります。

 

しかしもちろん、権利者として黙認できない例もあります。

例えば、その作品を「勝手に使った」「ファン活動」で金銭のやり取りが発生する場合は、グレーである行為がかなり黒に近づきます。

公式イラストを勝手に使ったグッズ販売や、有料コスプレイベントの開催などが挙げられるでしょう。

 

公式イラストを無断で使用し、グッズを制作し販売する行為はグレーではなく明らかに黒。アウトです。

それは「ファン活動」を逸脱した、「他所の作品を利用したビジネス」です。

「ファン活動」という曖昧な表現の境界線は、こういったあからさまな営利目的活動か否かでも判断されるでしょう。

例えば、二次創作の代名詞でもある「同人誌」ですが、人気作品の人気作家は非常に大きな金額の売上を上げることになります。

これを健全なファン活動と捉えるか、営利的な利用と捉えるかは非常に難しい問題です。

コスプレで言えば、キャラクターのコスチュームを「勝手に着る」イベントで「勝手に儲けている」場合は、営利目的だと捉えられるかもしれません。

事実として、同人誌の販売やコスプレを禁止しているコンテンツも存在します。

そうなる経緯は、やはり「公式側の設定と大きく異るもの」であったり、「公式のイメージを壊すもの・著しく乖離しているもの」などが挙げられるでしょう。

それはやはり作品・権利者・クリエイターの意図しないイメージダウン、言い換えれば営業妨害のようなものです。

 

これはキャラクターに扮するコスプレや、キャラクターのアイコンを使用しているSNS発信などにも言えるでしょう。

特定のコスプレイヤーの言動や活動、アイコンを使用しているユーザーの発信によって、権利者や作品の印象が貶められる・不利益を被ることがあれば、著作権侵害や損害賠償として告訴される可能性があるでしょう。

例えば、特定のキャラのコスプレ・アイコンを使用し、過激な発言等で炎上したとすると、その作品・キャラクターの印象までもがマイナスイメージとなることだってありえますよね。

ですから、作品のキャラクターを「勝手に」SNSアイコンにしたり、コスプレで扮するときは、その作品・キャラクター・権利者に迷惑にならない、オタクとして恥じない言動と責任がつきまとうのです。

 

 

 

まとめ

オタクが作品を楽しみ、「ファン活動」をする上で守らなくてはならないマナーはおわかりいただけたでしょうか。

最後に作品の権利に抵触しそうな行為をまとめてみましょう。

やってはいけない(ほぼ黒)
・公式イラストを無断で使用した営利活動(グッズ販売やコスプレビジネスなど)
マナーを守って行おう(グレー)
・二次創作作品での営利活動(同人誌即売・グッズ販売)
・公式イラストのSNSアイコンやヘッダーへの無断使用
・コスプレ
冒頭で触れた事の発端である「法整備」は、作品やクリエイターを守るために必要なことなのです。
作品あってのオタク、コンテンツあってのオタクです。

 

もちろん知っていたという方もそうでない方も、これを機に自分が好きな作品に恥じないオタクで居られるよう、私も含めてお互いに気をつけていきましょう。

 

 

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